春芽ハルメ重点ジュウテン3tどり経営ケイエイ提案テイアン その2
                現代農業2010.12月号192Pより転載
 この夏は記録的な猛暑で、地球的規模で変化が起きているように感じま
す。アスパラもハウス栽培を中心に、夏場の生育におかしな兆候が出ている
と思います。シナ質低下(穂先の開きや茎の曲がりなど)、若茎のホソさ、病害虫
の多発(ダニ、斑点病)などです。また、この夏は「夏芽どりは大変だから
春芽をたくさんとる栽培方法を教えてほしい」と多くの方からいわれまし
た。これもこの気象の影響でしょう。
安定経営のためには、早急に春芽3tどりの栽培技術を確立したいもので
す。前回は夏場の管理のポイントを説明しましたが、今回は秋から翌春の立
茎までの管理をお話ししたいと思います。
 秋から冬に決まる春芽の収量
 夏場を乗り越えたら、ここからが勝負です。秋□から冬にかけて地上部で
つくった養分を貯蔵根へいかにスムーズに転流蓄積できるかで翌年の春芽収
量が決まります。草勢維持(肥料・水分・防除)に努めることは当然ですが、
この作業とあわせ、皆さんの地域の気象、とくに気温の変化を十分に把握
してください。10年前、20年前とは大きく変化しています。
 今年の気象はラニーニャ現象といわれ、一般的に夏は暑く、冬は寒くなる
とされています。日本は春夏秋冬あり、世界でも季節の移り変わりがはっ
きり分かれている国ですが、最近は、どうも春・秋の気候が短く、夏から急
激に冬の気候になっていくようです。
 平均気温が15度前後になるとアスパラは休眠状態に入っていきます。こ
の時期を目安に転流促進剤を使うことが大切だと思います。秋が短い昨今
は、転流促進剤の有無で貯蔵根の糖度差が大きくなるからです。
 転流促進剤と水
 転流促進剤は平均気温が15度前後になったら使い始め、7日おきに3〜
5回使用します。最低気温が10度前後になると急激に転流が進むので、こ
の時期に集中して使うと効果が高まります。ちなみに平均気温15度前後か
ら最低気温10度に下がるまでの期問は全国的に見てほぼ5〜7日です。
 転流促進資材の主な成分はリン酸とカリ。この二つをやればそれなりに
効果も出ますが、転流作用には水が絶対条件です。
資材だけを散布しても水を与えなければ効果は低下します。夕方、地温が
下がってきたときにかん水し、昼と夜の温度差をなるべく設けてやると、
転流促進効果が高まります。
                  ナツぎたハル重点ジュウテンどりのアスパラ
                  しっかり黄化キカ落葉ラクヨウしたら地上チジョウ
                  
 地上部の刈り取りは「急がず慌てず」
 次は地上部の刈り取りです。最近の暖冬傾向で地上部も思うように黄化し
づらくなり、養分転流を考慮せずに早めに刈り取る圃場もあるようです。
皆さんもご承知のとおり茎葉が黄化しないと、養分が地下部へ溜まりません。
とくに春芽をたくさんとるための栽培では、刈り取りは絶対に急がず慌てず
に行なうことが大切です。
 休眠時間を考慮コウリョして保温開始
 また、休眠現象やそれを打破する時間などのアスパラの生理を無視し、保
温などの作業を早めると、収量や品質は極端に低下します(図)。一般的には
5度以下で600〜800時問の低温遭遇が必要とされていますが、多年株
の場合はもっと時間を要します。地域や栽培年数(株年数)、品種(雌雄株・
オス株)によっても若干差はあると思いますので、自分のところに合った作業
を行なってください。
 地上チジョウりからハル収穫シュウカクまでのポイント
 地上部の刈り取りから春芽収穫までの作業のポイントを、もう少し
具体的に整理してみます。
地上部刈り取りは茎がストロー状になってから
 地上部の刈り取りは茎葉が完全に黄化してから行ないますが、茎
 の中が空洞のストロー状になってから刈り取ると間違いありません。
刈り取りは茎葉を傷めないよう鎌で
 なるべく茎葉をゆらさずに地際から刈り取ります。手で引き抜いたりする
 と茎葉が傷み、根からアレロパシー物質が出るので、鎌などで要領よく刈
 り取ります。
残渣ザンサは圃場の外に持ち出す
 刈り取った残渣ザンサ(茎葉枝)は、なるべく圃場の外に持ち出します。残して
 おくと、病原菌や病害虫の卵が越冬し、翌年影響が出ます。また、刈り取
 り後のウネ上は病害虫や雑草抑制のためにバーナー処理をします。
刈り取り後は冬肥
 冬に施用する肥料は春芽を動かすためのものであり、芽がウゴくとアスパラ
 は冬でも肥料を吸収します。ですから冬肥は重要で、これが収量にも影響し
 ます。ただし、土壌分析に応じてバランスを崩さないようにしてください
(詳しくは09年11月参照)。
  アスパラはアキからフユにかけて休眠キュウミン現象ゲンショウ(加温カオンしてもモエしにくいなどの現象ゲンショウ)が
  られ、休眠キュウミン打破ダハのためには5度以下ドイカ地温チオン一定イッテイ期間キカン遭遇ソウグウする必要ヒツヨウがあるといわれ
  ている。福島県フクシマケン農業ノウギョウ総合ソウゴウセンターの試験シケン(2008)によると、ウェルカムもハルキタル
  (ともに2年生ネンセイカブ)も5以下イカ低温テイオンにあたった時間ジカンナガくなるほど、加温カオン開始カイシ
  してから萌芽ホウガまでの期間キカンミジカく、クキカズオオくなることがわかった
保温前に十分なかん水
 保温作業の開始は前述のとおり、休眠打破を考慮して行ないます。その前
 に十分にかん水することも大切です(土壌水分は80%前後を保つ)。水が
 ないと保温しても温度が下がりやすくなり、根も動きません。
地温20度を目安に
 ハウス内の温度は昼は30度以下、夜は7度以上を確保し、地温20度
 くらいを維持します。他の作物では根が活発に動く最適サイテキ温度が研究され
 ていますが、アスパラはそのようなデータがありません。私の経験上、
 20度前後で根が一番活発に動くと思っています。
肥料は収穫量に応じて
 収穫を始めてからの肥料は、150s前後とったらチッソ成分3sを目安
 に「とっただけやる」を意識して入れます。
立茎は遅らせるただし生育に応じて
 春芽収穫後の作業は立茎です。前回詳しく述べましたが、ポイントは立茎ま
 での日数を収穫開始から60〜65日に延ばすことです。ただし、前年度の
 後半の生育があまりよくない場合は、親茎が細くなりすぎるので若干早くし
 ます。また、全雄株の場合は雌雄株より10日は早くします。秋の生育充実
 度と春芽の状況で判断してください。
 今回ご紹介した春芽重点3tどりの基本的な考え方は、春芽だけをとるの
ではなく、春芽をたくさんとり、夏芽はセーブして草勢維持に努めるという
ことです。すでにこの栽培方法に取り組んでいる方もおられますが、地域や
生産者に応じた栽培法として確立すれば嬉しいことです。
      (元JAさが 現潟Wャット)
 ※転流テンリュウ促進剤ソクシンザイとはVガードのことです。